ロボティクスおよび自律システムの研究・開発は加速しており、認知・判断・計画・制御といった複合領域の技術要素が必要とされています。MATLAB^®およびSimulink^® はアルゴリズム開発、データ解析、可視化、数値計算のための統合開発環境です。近年は、制御システムの設計に加え、自律ロボティクス分野の認識・判断・計画アルゴリズムから、３D可視化まで幅広いソリューションを強化しています。アルゴリズム設計からモデリング・シミュレーション・仮想テスト・自動コード生成・実装までの一連の開発プロセスを単一環境で実現し、開発を加速します。
MATLABおよびSimulink をご存知の方も、そうでない方もぜひご参加ください。

大型クレーンなどの建設機械では、転倒や構造損傷、つり荷の振れ回りなどの事故リスクが存在する。これらの事故を防ぐために、メタバース技術を用いた操作者の訓練が注目されている。本発表では、Unreal^® Engine 5を用いて構築した大型建設機械のVR操作シミュレータにおける、MATLAB^®･Simulink^®を活用したリアルタイムシミュレーションの取り組みについて紹介する。本シミュレータでは、Unreal Engine 5上の機械の挙動はMATLAB･Simulinkを用いた動力学的解析により計算される。また、MATLABで取得した力学的データに基づく、制御アルゴリズムや自動運転技術の研究教育の取り組みについても紹介する。

宇宙機制御の分野では、地上で無重力を模擬できない等の制約から、シミュレーションによる検証を数多く実施している。その中でもMATLAB^®、Simulink^®は多く活用されており、小型月着陸実証機（SLIM）においても活用された。宇宙開発に携わり始めたばかりの方でも宇宙機の制御の動作を理解することが容易となる強力なツールであるが、目的に応じて、モデル化の範囲やシミュレーション方法を適切に設定することが重要となる。本講演では月着陸シミュレーションという観点で、モデル化範囲を非常に限定し分かりやすくした例（主に教育や初期検討向け）と、実際の搭載ソフトウェア検証レベルでの動きの例としてSLIMでの活用事例を紹介する。

少子高齢化により作業者不足が深刻化する中で、ロータリ除雪車においても自動化・省力化が求められている。NICHIJOとして初となるロータリ除雪車の自動走行開発に取り組むにあたり、車両製造前・車両出荷後の車両がない期間での開発着手のため、除雪車のシミュレーション技術の開発に取り組んだ。NICHIJOにおけるMILSを中心としたモデルベース開発導入のプロセスと、その活用法について紹介する。

弊社は本年1月、米国ラスベガスで開催されたWorld of Concrete 2025に、自律移動式の鉄筋結束ロボットをコンセプト展示し、高い自律性と結束スピードで好評を得た。ロボット開発は、ホッチキスや釘打機など、ハンドツールが主な事業である弊社にとって初めての挑戦であり、何もない状況から開発を推進できた要因は、Simulink^®を用いた3DデジタルツインによるMBDプロセスの採用と、それによって可能になった専門領域横断の開発スタイルだった。本講演では、開発中に発生した課題やそれを解決するための取組み、今後の展望を紹介する。

SLAM（Simultaneous Localization and Mapping）は、lidarやカメラなどのセンサーを用いてモビリティの位置を推定する技術であり、自律走行モビリティの開発において不可欠な技術である。SLAMの精度は周囲の環境に影響されるため、シミュレーション環境でさまざまな条件をテストし、システムの剛健性を確保する必要がある。本セッションでは、SLAMとセンサーフュージョンの開発における実機測定結果とシミュレーションデータの併用について紹介する。シミュレーションの構築では、周囲環境およびセンサーモデルを重視した。まず仮想3D環境を作成し、次にSimulink^®を用いてlidar、カメラなどのセンサーモデルを構築した。その後、小型モビリティモデルを展開し、Unreal^® Engineでレンダリングされた環境内でデータを収集した。SLAMを適用することで、実機データと合成データの関連性を通じて位置推定に与える影響を確認した。最後に、マルチモーダルセンサーフュージョンおよびSLAMにおけるMATLAB^®とSimulinkの活用について議論し、アルゴリズム開発の有効性を示す。この研究が小型モビリティシステムの開発を加速することを期待する。

建設業における労働力不足解決のために、手作業の自動化による省人化を目指す。自動化実現のために、Series Elastic Actuator（SEA）による力制御機能を開発し、SEAを2tクラスのバックホウに実装した次世代作業機のプロトタイプを開発した。プロトタイプは短期間での開発が求められ、開発効率向上のためにMATLAB^®、Simulink^®を活用した制御開発、また力制御機能の開発ではSimscape™を活用した初期検討にも取り組んだ。

AI を活用した製品開発は近年ますます身近なものになってきましたが、実際のエンジニアリング現場では、単にモデルを作るだけでは不十分で開発後の実装フェーズまで含めた視点が不可欠です。MATLAB^®は、データの前処理、AI モデルの開発から評価、さらには物理モデルとの連携やリアルタイム環境への実装までを一貫してサポートする統合プラットフォームです。本セッションでは、MATLAB を活用することで、特徴量エンジニアリングや AI モデルの比較・評価を効率的に行い、Simulink^® と連携したシステム設計や組込コードの自動生成までをスムーズに実現できることをご紹介します。組織的な AI 教育事例も併せて、実際の適用事例を交えながら AI をより現場に根差した形で導入・活用するための実践的なアプローチをご紹介します。

近年、畜産業において乳牛の個体管理の効率化が求められている。本プロジェクトでは、4Kカメラで撮影した牛舎内の映像から、AIを活用して乳牛の耳標（個体識別番号）を自動で読み取り、牛の居場所を把握する技術の実証試験を行った。高精度な認識を実現するため、複数の画像認識モデルを比較し、試行錯誤を重ねた。その結果、高精度で識別が可能な、実用的なシステムを開発できた。さらに、専門的なIT知識がなくても使えるように、開発したシステムをWebブラウザで利用できるアプリとして実証実験に活用した。MATLAB^®の統合環境を活用することで、システム開発の期間を短縮し、精度向上にも成功した。本技術は、畜産業のデジタル化を促進し、乳牛の遠隔見守りや効率的な管理に貢献することが期待される。

鉄道業界では、人手不足に伴う信号装置などの保守業務の負担が増大している。特に、地方鉄道において影響が大きく、保安システムのスリム化が求められることから、当社では2019年度より、地方鉄道向けの無線式列車制御システムの開発を進めている。本システムでは、車軸に取付けられた速度発電機(TG)の信号を基に列車位置検知を行うが、地方鉄道特有の課題があり、TGを代替する列車速度検知手段が必要となった。そこで、MATLAB^®を使用して、GNSS、IMUセンサを用いたカルマンフィルタをベースとする列車速度推定アルゴリズム、および車上装置-センサ間のデータ同期とリアルタイムモニタリング・ロギングを実現するアプリケーションを開発し、実車試験にてアルゴリズムの性能を評価した。本講演では、一連の開発内容について紹介する。

センサーや音等の時系列信号に対してAI技術を応用することで、官能評価の自動化や、ルールベースによる判定の高度化が可能となる。その際にキーとなるのは三つ。一つは信頼性の高い"信号処理環境"、二つ目は初心者でも扱いやすい"AI設計環境"、そして三つ目は、信号処理とAIとを組み合わせたシステムをエッジへ実装するための"統合プラットフォーム"。本セッションの前半では、音声・音響処理をアシストするAudio Toolbox™を中心に、信号処理技術を応用した各種機能や例題を紹介する。後半では、MATLAB^®が有するコード自動変換機能を使って、AIモデルなどのアルゴリズムをエッジ実装する例を紹介する。また、メモリ制約のあるエッジデバイス向けに、モデルやコードを最適化するための手法にも触れる。信号処理やAIモデル作成、エッジ実装の経験を問わず、どなたにでもご参加いただきたい。

利根川水系には、治水、利水、発電といった異なる目的を持つダムが複数あり、その下流には多くの水力発電所が存在する。従来、これらのダムはそれぞれの目的を達成するための連携運用を匠の技で行ってきた。連携運用による最適化の難易度は非常に高く、匠の技を再現、あるいはそれを超えるシステムは存在しない。この結果、再生可能エネルギーを最大限活用できず、さらに増発電となる余地が残されていた。この課題に対し、深層強化学習を活用した意思決定モデルをMATLAB^®で構築した。このモデルは、ダム管理者の経験知を基に、複数ダムの連携運用を複数のエージェント (マルチエージェント) で最適化し、治水及び発電他の利水の制約条件を遵守しながら最適な発電オペレーションを実行する。結果として、従来の運用を超える大幅な増発電が実現し、水力発電オペレーションの効率が向上した。制約条件を完全に遵守することは課題として残るものの、実績運用の発電量を上回るオペレーションケースを得ることができた。

NSKでは、研究開発理念である4コアテクノロジープラスワン（「トライボロジー（摩擦制御技術）」、「材料技術」、「解析技術」、「メカトロ技術」＋「生産技術」）の1つであるメカトロ技術開発において、アクチュエータなどの制御技術開発を行っている。特に近年では、制御技術に機械学習モデルを組み合わせた人間の模倣動作が可能なロボットアクチュエータの開発を進めている。本講演ではその一例として、社内でMATLAB^®、Simulink^®を使用して開発したバイラテラル制御技術と、Python^®で学習済みの機械学習モデルの連携をDeep Learning Toolbox™を用いて実現し、dSPACE社のMicroLabBox^®に実装し実機動作させた事例を紹介する。

ADASのシミュレーションを行うためには、検証の対象となるアルゴリズムに加えて道路や他車両を含んだ環境モデルの準備も必要です。このセッションではRoadRunner製品による3D道路モデル設計からテストシナリオの作成、およびSimulink^®と連成したシミュレーションによる検証までを実施できる様子をご紹介します。また、地図データ連携や、ドラレコ動画および車載センサデータからテストシナリオを自動生成できる今注目のソリューションも最新機能を交えながらご紹介します。

Arene Reactor は、ADAS のテストと検証のためのウーブン・バイ・トヨタのシミュレーション・ソリューションである。ASAM OpenSCENARIO^® や ASAM OpenDRIVE^® 等のオープンスタンダードを活用することにより、ユーザーが既存の資産を最大限に活用できるようにしている。MathWorks 様との密な協力のもと、RoadRunner を統合したワークフローを開発し、3D ワールドやシナリオの作成を容易にした。このセッションでは、これらの活動の紹介とともに新しいユーザーのオンボーディングのハードルを大幅に下げた方法を紹介する。

交通標識認識システム（TSR）は、カメラなどのセンサーが交通標識や道路情報を認識し、その情報を車両のメーターやヘッドアップディスプレイに表示することで、ドライバーによる標識の見落としを防ぎ、安全運転を支援する先進運転支援システム（ADAS）の一つである。近年、システムの複雑化や法規制の厳格化に伴い、TSR開発におけるテスト条件は多様化している。この結果、実車検証には膨大な時間とコストがかかることが課題となっている。そこで弊社では、開発効率の向上を目的として、RoadRunner製品とMATLAB^®、Simulink^®を連携させた仮想シミュレーション環境を構築した。この連携環境により、実車検証の一部をシミュレーションで代替し、効率的かつ効果的なテストが可能となった。本講演では、構築した仮想シミュレーション環境の詳細や、TSR開発における活用事例について紹介する。

文系社員が事務系職場でデジタル化/データサイエンス活用の火付け役に！デジタル未経験者が社内のベテラン向けデジタル実践教育を受け、事務系職場（生産管理）で「数理最適化」を用いた組立日程計画作成の自動化に挑戦。自動織機の製造では、生産の90%が特殊仕様で組立工数差が約3倍になることもある。このため、超多品種少量生産の組立生産計画の作成には多大な時間がかかり、変更要望に対応することも困難であった。更に生産計画にミスがあればやり直しが必要で、難易度の高い業務の引継ぎは最短でも3か月かかっていた。そこで「数理最適化」を用いた組立日程計画作成の自動化に取り組み、効率的な計画立案を実現。工数を大幅に低減し、生産計画のミスも減少した。結果として、生産管理の主要業務の多能工化や改善が更に加速、業務の属人化も解消することができた。

弊社における自動車開発では近年の電動化に伴い、 インバータノイズ等のこれまでには無かったような高周波帯の騒音対策が必要となっている。 一方で依然として低周波における対策ニーズも高い。 そこで、 信号処理技術を活用し、高/低周波でロバストに音源を特定できるシステムを開発した。 さらにこの技術を応用し、 ガタツキや擦れによる異音評価実験の、 長期化する負荷サイクルテストを自動評価するシステムも開発した。

私たちの研究室では、3次元音響を用いた音のXR(VR)の研究を進めている。音のVRはエンターテインメントのみならず、会議、教育、訓練、芸術、医療、高齢者・障害者支援など日常生活の多岐に渡る局面において、対面と同等のコミュニケーションを提供できる。音のVRの本質は3次元的な音の方向感と距離感の再現であり、これにより音空間の臨場感やリアリティが再現される。音の3次元再生では聴取者の頭や耳介に起因する頭部伝達関数を用いるが、頭部伝達関数には顕著な個人差があり、高精度な音のVRは未だ実現されていない。私たちは各聴取者に適合する個人化頭部伝達関数を生成するモデルを構築し、MATLAB^®のApp Designer用いて一般の聴取者でも容易に個人化頭部伝達関数を生成できるアプリを開発した。このアプリを用いて、NTTコンピュータ&データサイエンス研究所と共同で音響XRを活用したサッカー観戦の実証実験を国立競技場で実施した。会場の歓声や選手がボールを蹴る音の臨場感に加え、あたかもアナウンサーや解説者が試合状況・戦術、選手の情報などを周囲から解説してくれているような、新しい観戦体験を提供した。